大井三丁目高齢者憩いの場

東京都品川区

カテゴリ|非住宅建築物

東京都品川区の「大井三丁目高齢者憩いの場」様は、高齢者の介護予防や健康維持と増進、そして生きがいづくりを支援するとともに、高齢者と多世代の方々が利用、交流できる地域に開かれた施設です。こちらの外壁、そして内装に100%自然素材の「シラス壁」が採用されました。

開放感のある外観

(写真1)開放感のある外観。右奥にエントランス、手前には菜園が配置されています。外壁には、スーパー白州そとん壁W(W-121, スチロゴテ仕上げ)が採用されました。

「大井三丁目ゆうゆうプラザ」という愛称でも呼ばれているこちらの施設は、今年(平成29年)5月に完成しました。完成当初は約100名もの方が内覧に来られたとのことで、周辺住民の方の関心の高さが伺われます。

もともとこちらには趣のある木造住宅があり、地域の方にも愛されていた建物だったそうです。そちらに住まわれていた方が、「土地と建物を高齢者の憩いの場として整備してください」と品川区に寄贈されました。

菜園は園芸療法の場として、季節によって様々な植物や野菜、果物が植えられる予定

(写真2)菜園は園芸療法の場として、季節によって様々な植物や野菜、果物が植えられる予定。利用者や地域ボランティアだけでなく、周辺住民にもコミュニケーションの場として開放していきたいとのこと。この時は、スイカが育てられていました。

近隣は自然や植物を大事にする地域性があり、そういった地域環境に溶け込む“あたたかみのある建物”として新築されました。

設計事務所作成の建築模型。

(写真3)設計事務所作成の建築模型。近隣住宅との調和を保つため、元の建物と同じ2階建てにし、容積率、建ぺい率ともにゆとりのある都会にありながら贅沢な空間が完成しました。

設計を担当された大野 順義氏(一級建築士:大野設計事務所)は、人が集うあたたかみのある場所には、自然素材を使った方いいのではないかと「シラス壁」や「木材」をメインに使うことにしたのだそうです。また、建物が主役なのではなく、ここを利用する人が主役となるようにとの想いから、外壁、内装はできるだけ主張をしない色の「淡いグレー」(ビオセラ, BC−50, アラバケ引きヘッドカット仕上げ)をご採用になりました。

大きな窓からは外光が十分に入るので、照明も必要最低に抑えられます

(写真4)大きな窓からは外光が十分に入るので、照明も必要最低に抑えられます。夏は庇によって遮光しますが、フウセンカズラやひょうたんなどを植えて壁面を這わせ、グリーンカーテンを作ることも考えていらっしゃるとのこと。冬は太陽光が奥まで差し込むように設計されており、温かかく過ごせるのだそうです。

まだオープンして間もない施設ですが、新築特有のツーンとした化学的な臭いが感じられず、「居心地が良くここに住んでみたい」という利用者の声も聞かれているとのこと。シラスの機能については、「シラス壁の採用面積が非常に広いので、利用者の方には“ニオイが気にならない”という空気清浄機能を体感いただけるのではないかと思います。また、梅雨の季節には調湿効果も感じられるのではないでしょうか。一年を通じてどのような意見が出るのかも楽しみです。」と大野氏。

こちらの小規模で家庭的な雰囲気を備えた憩いの場は、高齢者の介護予防と多世代交流を目的として事業内容が組み立てられています。また地域ボランティアを育成し活躍していただくことも、一つの方向性にあるとのことで、ケアマネージャー(介護支援専門員)や栄養士がその技術を地域ボランティアに開放して一緒に活動されています。また地域の民生委員の方も活動を支援されています。

(写真5)建物の中央に配された交流室と奥にキッチン。吹き抜けにより空間が広く見え、2階とのつながりが感じられます。

こちらの小規模で家庭的な雰囲気を備えた憩いの場は、高齢者の介護予防と多世代交流を目的として事業内容が組み立てられています。また地域ボランティアを育成し活躍していただくことも、一つの方向性にあるとのことで、ケアマネージャー(介護支援専門員)や栄養士がその技術を地域ボランティアに開放して一緒に活動されています。また地域の民生委員の方も活動を支援されています。

2階多目的室からの眺望

(写真6)2階多目的室からの眺望。1階の菜園や、交流室での様子がよくわかります。

運営を請け負われている 社会福祉法人 品川総合福祉センター事務局次長の加藤氏は「地域の皆さんが気軽に歩いて通える雰囲気づくりやプログラムを企画しています。高齢者お一人で暮らしていらっしゃる場合、一日誰とも喋らないこともあります。とにかく外に出ていただいて、ふらっと立ち寄りお茶などで水分補給していただく。そして縁側で近隣の方達とおしゃべりや団欒を楽しんでもらう。それだけでも世代を越えた支え合いになります。そういったことができる福祉拠点になればと期待をしています。」と語られました。

2階壁部分には明かり取りの窓

(写真7)2階壁部分には明かり取りの窓。こちらはラウンジスペースとなっています。右奥は多目的室です。

2階ラウンジ。屋根には、南面傾斜を利用して太陽光パネルがつけられています。

(写真8)2階ラウンジ。屋根には、南面傾斜を利用して太陽光パネルがつけられています。

昨今「健康寿命」という言葉をよく聞くようになりました。歳を重ねても、健康で自ら活動的に生活ができる期間を言うのだそうです。この期間を延ばしていくことは、本人や家族の負担を軽減するだけでなく、日本の経済や社会を維持する上でとても重要なことです。

大井三丁目高齢者憩いの場様の活動のような、地域の多世代交流から生まれる支え合いの精神が、この課題をもっと身近にするたけでなく、肩肘張らず楽しみながら取り組める方法の一つとして、今後受け入れられていくのではないでしょうか。

シラス壁も「健康で快適な空間づくり」に貢献させていただければと思います。

2階多目的室

(写真9)2階多目的室。右側の障子を開けると吹き抜けから1階を望むことができます。施設のどこにいても、つながりを感じられるように設計されています。

<大井三丁目高齢者憩いの場(管轄:品川区福祉部高齢者地域支援課)>
〒140-0014 東京都品川区大井3-17-16
TEL 03-3777-8378
開館時間 AM9:00-PM5:00

<運営:社会福祉法人 品川総合福祉センター>
〒140-0003 東京都品川区八潮5丁目1番1号
TEL 03-3790-4729(代表)

<建築デザイン設計:大野設計事務所>
〒141-0021 東京都品川区上大崎3-10-1中島ビル303
TEL 03-3447-7141