施工事例
カテゴリ|非住宅建築物
湧水の宿 湯元群鷹館
長野県松本市
長野県中央部、薄川上流の標高約1,050メートルの渓谷沿いに湧く温泉地・扉温泉に、湯元群鷹館があります。
この館内の内装に、シラス壁が採用されています。
2005年にリニューアルオープンした群鷹館。
扉温泉で最も古い明治2年創業の老舗旅館です。
かつて鷹が多く棲息し、その群れ飛ぶ姿を宿の名としています。
四季折々の自然が感じられ、天の岩戸を開いた天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が戸(扉)を戸隠神社に運ぶ途中、ここで休んだという神話に由来する温泉があり、「東の扉」「西の白骨」といわれるほど、胃腸に効能がある名湯として古くから多くの人々に親しまれています。
また、地元の食材を生かした自然の滋味溢れる料理も人気の旅館です。
シラス壁について、オーナーの有賀さんにお話を伺いました。
「以前私が建築会社にいた時、設計士がビッグサイトでシラス壁が出展しているのを見て、その後リフォームで採用したことがシラス壁との出会いでした。」
100%自然素材や質感、機能等のシラス壁の特性を実感され、リフォームや新築の物件に次々と採用。ついには、ご自宅にまでご採用いただくことになりました。
質感や雰囲気が、クロスと比較してまったく違うと大変気に入っていただいています。
左:客室【林】少しずつ赴きが異なる客室は全部で8つ。薩摩中霧島壁SN-16(廃版) アラバケ引きヘッドカット仕上げ
右:信楽焼き陶器の洗面台 照明によるシラス壁の陰影が印象的 薩摩中霧島壁SN-16(廃版) やまなみローラー仕上げ
「設計士曰く、この旅館はレトロモダン。
シラス壁の色を基調とし、それにあわせて素材や天井材を決めました。
柱や梁は、古材を有効活用しています。柿渋を二度塗りし、色調にアクセントを持たせました。」
壁と柱との色のコントラストが美しく、個性的な照明や絵画と上手く調和しています。
「新しいものをつくる場合、最新のものを使用するから、3~4年経つと古くなってきます。しかし、シラス壁の主原料シラスは九州では昔から身近にある土だし、古材は何年も活用されてきたもの、つまりはじめから新しくないので、古くならない。それがいいと思います。
竣工から5年が経過しましたが、張り替えの必要性や薄汚れた感じがなく、当初のままです。たいしたものですね。」
お客様の安心を考えて全室にシラス壁を採用。スッキリと清涼感のある空気が辺りを漂う。水平に広がる視線が心地よい。左上:客室【林】 右上:客室【風】 左下:客室【山】 右下:客室【山】 薩摩中霧島壁SN-16(廃版)
「シラス壁は、何より安心です。100%自然素材だから。
旅館には様々な方が訪れます。だから、いろいろな匂いが存在します。
シラス壁の客室では、お客様が帰られたあとしばらくすると自然に匂いがなくなっています。即効性はないけれど、自然な感じになるのがいいですね。
また、この旅館は川筋に位置し、近くに滝もあります。以前の建物と比べると、湿気を感じなくなりました。」
シラス壁の消臭効果や調湿性能を、毎日体感していただいているようです。
食事処 障子を閉めると個室として利用できる。家族や友人とゆっくりと食事を楽しむことができる。
ラウンジ ゆっくりとした時間を過ごすことができる。取材時は心地よいボサノバが流れていた。
薩摩中霧島壁SN-16(廃版)
有賀さんは、以前から自然素材思考だったようです。
「現在、環境の時代と言われますが、こんなにもクローズアップされる前から私たちは環境を意識していました。
建築材料においても、処理できるものとできないものとが一緒になっている複合材をできるだけ使用しないようするなど、環境を考えてリサイクルできるものを選んでいます。
そして、本当の自然素材は、経年変化で風情が生まれます。」
環境への配慮とともに、時間とともに味わい深くなる素材の表情をとても楽しみにしているようでした。
客室に響く水の音。 |
露天風呂。自然の中でゆっくりと身体を休めることができる |
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松本駅から車で約30分。 |
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湯元群鷹館
〒390-0222 長野県松本市入山辺扉
TEL: 0263-31-2201
URL: http://www.gunyoukan.co.jp/
設計
有限会社 建築アトリエ秀
〒396-0015 長野県伊那市中央5275-9